水道代、ガス代、家賃・・・などなど、ホテル経営には大きな固定費が必要です。
固定費の中でも光熱費、とりわけ電気代の割合は高く、電気の利用効率によって必要なコストは大きく変わります。
また、コストの観点だけではなく、最近は日本も国として省エネやCO2削減に取り組んでおり、節電は社会的な要請にもなっています。
こちらのページをご覧いただいているホテルスタッフ、経営者の皆様においては、ホテルの節電に頭を悩ませることも多いのではないでしょうか。
今回は、ホテルの節電について解説します。
電気代以外のコストカット全般について知りたい方は、「ホテルの経費削減方法を、具体的なアイディアを交えて解説します」も併せご覧ください。
目次
ホテルの電気使用量の傾向
まずはホテルがどの様な用途に電気を使用しているか確認します。
「財団法人省エネルギーセンター」の調査によると、ホテルの電力利用の用途として割合が大きいのは、照明やコンセント(22%)、空調(15.7%)、冷熱(14.2%)、温熱(10.7%)となっています。
つまり、ホテルは24時間明るく、快適な温度と空気を保つために、多大な電力を消費しているのです。
また、年間を通して見ると、高温多湿の日本では7月~9月が電気使用量のピークとなり、2月の電力使用量が最も低くなります。
ホテルのタイプによっても、使用する電力の傾向は異なります。
主に客室、廊下、ロビー、朝食会場で構成されるビジネスホテルは、主に客室やスタッフの常駐スペースの消費電力が大きくなります。
これらに加え、結婚式場、レストラン、宴会場、ジム等の施設を備えたシティホテルでは、各施設の消費電力も大きくなるため、節電対策を講じる必要があります。
さらにプールや大浴場を備えたリゾートホテルでは、これらの施設に必要な給湯の電力消費が大きくなります。
ホテルの施設・設備の種類が多いホテルほど、検討すべき節電方法も多岐に渡ります。
自社のホテルの各施設がどれだけ電気を使用しているか、きちんと把握しましょう。
ホテルの水道光熱費・電気代の目安はいくら?
ホテルの水道光熱費は、売上全体の5%~8%が目安です。
仮に、客室数100室、稼働率80%、ADR10,000円のホテルであれば、月間の電気代は100万円前後が適正と言えるでしょう。
すぐにできるホテルの省エネ・節電方法
電気代を節約するためには、小さな節電を積み重ねなければなりません。
以下では、明日からでも可能な節電方法を紹介します。
冷暖房・空調の節電
- ロビーではカーテンやブラインドにより日射を調整し、冷暖房への過度な負荷を避ける
- ガラスに遮熱シートを貼り、断熱性を向上させる
- 夏や冬以外の季節は、客室の冷暖房が効きっぱなしにならない仕様にする
- 従業員用の空調は、設定温度の管理を厳密に行う
- エアコンはこまめに掃除する
- 閑散期には使用する客室を特定のフロアに集約し、未使用フロアの空調を制限する
- 客室の冷蔵庫は基本的にOFF設定とし、利用するゲストが自分でONにする
照明の節電
- 閑散期には使用する客室を特定のフロアに集約し、未使用フロアの照明を制限する
- シャンデリア等の演出照明は、来客時のみ点灯させる
- 客室清掃は照明OFFとする
ホテルの契約電力会社の見直し・その他の節電
上記の地道な対策に加え、契約している電力会社を見直すことも検討しましょう。
2004年より、小規模ビルや工場用の電力においても電力自由化がスタートし、これまで地域の電力会社が独占していた電力供給に、「新電力」と呼ばれる新たな事業者が次々と参入しています。
「新電力」と言っても、これらの業者は発電そのものを担っているわけではなく、電力の小売事業者です。
そのため、電力の質自体はこれまでの電力会社が供給していたものと変わりありません。
多くの新電力が参入してるため、価格競争が起こり、より安価に電力をケースが増えています。
2004年以前より、同じ電力会社を使い続けているホテルは特に、新電力に切り替えることで、電気代を大幅に下げられる可能性があります。
ホテルによっては電気代を10%削減できるケースもあります。
10%とはいっても、電気代が年間1,000万円のホテルであれば、100万円の経費を削減できます。
宿サポートでは専門のスタッフが電力会社の見直し・ご提案をさせていただきます。
以下のボタンをクリックのうえ、専用のフォームからお問い合わせ下さい。
また、かなりのレアケースですが、ホテルの電気を本来の用途以外で大量に使う悪質なゲストが宿泊することもあります。
最近では、仮想通貨の「マイニング」(仮想通貨の取引に使う演算処理。電力を大量に消費する)をホテルで行われたケースもあります。
この様な悪質なケースは、電気代を請求することも視野に入れ、ホテルだけが一方的に損失を被ることの無いようにしましょう。
設備更新時にできる節電方法
以下では、明日すぐにはできませんが、設備の更新時に見直すと効果が大きい電気代節約方法を紹介します。
冷暖房・空調施設の更新
- 宴会場や大規模会議室において、利用者がいないときは外気の取り込みを抑えるダンパーを付ける
- 駐車場の利用状態によって換気の強さを変えられる、制御装置を導入する
- エアコンを最新の節電タイプに切り替える
いずれの施策も、客室改装や設備更新のタイミングで検討しましょう。
特にエアコンは、10年以上前のタイプから最新タイプに切り替えることで、年間1室あたり6,000円程度の電気代を節約できることもあります。
仮に1室あたり6,000円で200室のホテルだとすれば、
6,000円×200室=120万円
の電気代が節約できる可能性もあります。
さすがに全室のエアコンを取り換えるのは大変かもしれませんが、一部客室だけでも取り換えを検討する価値はあるでしょう。
照明の切り替え
照明は、もしも古い白熱電球や蛍光灯を使用している場合は、最新のLED照明に切り替えを検討します。
LEDはエネルギー効率が良く、寿命が長いことが特徴です。
以下は、白熱電球、電球型蛍光ランプ、LED電球の比較表です。
白熱電球 | 電球形蛍光ランプ | LED電球 | |
エネルギー効率 | 15 | 68 | 90 |
寿命 | 1,000時間 | 6,000~10,000時間 | 40,000時間 |
LED照明は、エネルギー効率において白熱電球の6倍、電球型蛍光ランプの1.3倍です。そして寿命は、白熱電球の40倍、電球型蛍光ランプの4倍です。
そして以下の表は、白熱電球、電球型蛍光ランプ、LED照明の1年あたりの電気代を比較した表です。
白熱電球 | 電球型蛍光ランプ | LED電球 | |
消費電力/時間 | 60W | 13.2W | 10W |
1年あたり電気代 | 4,555円 | 1,002円 | 759円 |
LED電球が最も電気代が安く、白熱電球は割高です。
寿命の長さも考慮すると、一度LED電球に取り換えてしまえば、当面は電気代を安く抑えることができます。
もちろん、LED電球は白熱電球、蛍光ランプに比べ割高であるため、全ての照明をLED電球にする必要はなく、特に使用時間が長いフロント等の照明に使用するのがベターです。
建物の修繕や改装時にできる電気代節約方法
以下では、建物の修繕や改装時にできる電気代節約方法を記載します。
タイミングが合わなければ手を付けるのが難しいですが、大規模な修繕工事を計画している場合は、計画に盛り込みましょう。
屋根の日射防止
屋根に降り注ぐ太陽光による日射を防ぐことで、太陽光による室内温度上昇を弱める効果が期待できます。
屋根の熱対策を怠ると、屋根表面温度が上昇し、熱が室内に大量に流入してくることになるため、特に暑い地域は対策が重要です。
屋根の塗装や工事を専門に扱っている業者があるので、ヒートアイランド現象が起きやすい都心部、日射の強い沖縄のホテル等では、専門業者に日射防止対策を依頼しましょう。
外調機を省エネタイプの製品に入れ替える
大規模な修繕工事や建て替えのタイミングで、外気を処理するための空調機(外調機)を新しい機器に変えることで、5%~程度の省エネになる場合があります。
建物に断熱材リフォームを施す
建物の構造部分に断熱材をいれることで、冷暖房の効率を高め、電気代を節約できます。
建物が古く、建築当初には断熱材が部分的にしか使われていない施設であったとしても、天井のみ、壁のみ等、部分的に断熱材をいれるリフォームができることもあります。
太陽光発電を導入する
発電した電気を販売できる太陽光発電機は、家庭用として広く普及していますが、ホテルでも導入事例が増えています。
千葉の「ホテル三日月グループ」では、郊外の広い土地を切り開いて大規模な太陽光発電でホテルの電気に利用しています。
ユニークなところでは、栃木県那須の「Looop Resort NASU」は、「泊まれる太陽光発電所」としてホテルと太陽光発電所が一体となった施設を運営しており、話題を集めました。
太陽光発電による電力は、国が固定価格で買取ることを約束しているので、収支の計算が立てやすいです。
郊外や地方で、ホテルの敷地・隣地を利用しやすい施設では、是非導入を検討しましょう。
宿サポートでは、最も費用対効果の高い電力プランを、ホテル・旅館の専門コンサルタントが無料でご提案させていただきます。
以下のフォームからお問い合わせください。
電気代以外のコストカットに興味のある方は、ホテルの経費削減方法を、具体的なアイディアを交えて解説しますやホテルの人件費削減方法を解説します~業務見直し・システム導入でより効率的なホテル運営をも併せご覧下さい。