ホテル・旅館の売上アップをもたらす方法~基本設定見直し、曜日別経路分析、キャッシュポイント増加、付加サービス等

レベニューマネージャーや支配人であれば、「ホテルの売上を上げるにはどうしたら良いんだ・・・」と日々頭を悩まされていることと思います。

昨今のコロナ禍はもちろんのこと、景気変動や自然災害といった外部環境の変化の影響を受けやすいホテルビジネスにおいて、継続的な売上アップは非常に難しいです。

しかし、日々の工夫や努力で売上を上げることは可能です。
今回は、ホテルの売上を上げるの施策を紹介します。

ネット販売における基本設定を見直す

まずは、一見地味ですが重要な、ネット販売における基本設定の見直しをしましょう。
確認しておくべき重要なポイントを以下にリストアップしています。

これらのポイントをチェックすることで、その他の施策の効果を最大化することができます。

  • 在庫・料金は可能な限り先の日程まで出ているか?
  • 不要な割引・クーポンの設定が残り単価ダウンの原因になっていないか?
  • Googleホテル広告(無料リンクor有料広告)に料金は掲載されているか?
  • 部屋やプランの画像は最新か?

公式ホームページをリッチコンテンツ化し、チャットボットを導入する

特にシティホテルやリゾートホテル等の高価格帯ホテルに当てはまりますが、公式ホームページのコンテンツは、説明文や写真を増やしてリッチにしましょう。

ゲストは高価格帯ホテルを予約する際、OTAで検討エリア内の各ホテルの在庫の有無やおおよその価格帯、立地等をチェックして候補のホテルを絞った後、公式ホームページで食事のクオリティ、客室の雰囲気等をチェックします。

公式ホームページのコンテンツが貧弱だと、せっかくホテルがゲストの予約候補に上がっても、最終的に他のホテルに流れてしまいます。

客室、食事、外観等は必ず最新の写真をできるだけ多く使い、食事メニューや設備の説明についてもなるべく詳細情報を盛り込みます。

OTAの中では、「一休」のインターフェースが優れているため、公式ホームページ作りの参考にしても良いです。

また、公式ホームページに訪れたゲストが、確認したい事の答えにすぐに辿りつける様に、ホームページにチャットボットを用意すべきです。

チャットボットとは、会話を自動的に行うプログラムのことです。
ゲストがスマホやパソコンから、チャットボットに質問を記入すると、プログラムが自動で質問に回答します。

チャットボット
チャットボットイメージ図

「駐車場はありますか?」「レストランの営業時間は?」等、ゲストが気になる質問をチャット形式で受け答え可能なため、ゲストの疑問を早期解決し、公式ホームページからの離脱を防げます。

販路を拡大する

売上を増やすために有効な手段が、販路の拡大です。
OTAはじゃらん、楽天トラベル、一休の3つが基本で、高額帯の施設ではReluxも選択肢に入れるべきです。

また、Booking.comやExpedia、Agoda等の海外OTAでも、特定の国内OTAを利用しないユーザー、海外旅行が好きな旅慣れたユーザー、トリバゴやトリップアドバイザー等のメタサーチを使うユーザー等、国内OTAとは違う客層を集客できます。
海外OTAはインバウンド集客専用、という先入観は捨てましょう。

若い世代を中心に支持を集めている、世界最大手の民泊サイト「air bnb」でもホテルを販売することができます。

民泊サイトは、20代の若い世代や外国人、3連泊以上の長期滞在者の利用も多いため、国内OTAとは違う顧客層を集客できます。

また、最近ではホテルやビルの1室を借り、パーティーやビジネスを行う「レンタルスペース」の利用も広がってています。

既存のホテルもレンタルスペースに次々と参入しており、大阪や関東圏等の都市部ホテルは、レンタルスペースのポータルサイトで予約数を稼いでいます。

販売経路毎の販売室数を曜日別に分析する

販路を可能な限り広げた後は、定期的に見直すことで販路を最適化します。

リアルやOTA等の販路毎の実績に合わせ、限られた販売室数を効率的に配分することが売上アップのためには重要です。

そして、より精度の高い配分をするためには、曜日毎の分析が不可欠です。例を挙げて説明します。

例えば、販路毎の実績が以下の様なケースの場合、どの販路の室数を増やせば良いでしょうか?

販路毎の比較

一見すると、ADR、DOR共に高いリアルの予約を増やすことが、売上アップに繋がりそうです。

この数字を基に、「よし、リアルの割り当てをもっと増やそう!」と考えがちですが、ここで立ち止まって曜日別の販売実績を出してみましょう。

以下の図は、販路毎の室数、ADR、DORの曜日別の販売実績です。

販路と曜日別分析

まずは上の赤枠部分、販売室数に注目してください。これを見ると、OTAは比較的どの曜日も予約が入っていますが、リアルは金・土曜日に偏っています。

金・土曜日は多くの場合、他の曜日に比べ2名以上のレジャー利用が多く、他の曜日は1名利用のビジネス客の割合が多くなります。

つまり、リアルは金・土曜日のレジャー向けの販売は強いですが、1名利用のビジネスには弱い、ということが分かります。

更に、土曜日のADR、DORを確認しましょう。全体ではリアルに比べてADR、DORが低かったOTAですが、土曜日を見るといずれもリアルより高いことが分かります。

OTAは土曜日だけではなく、ADRやDORが低い平日の集客も強いため、全体で平均を取るとリアルより低い数字となっていたのです。

以上より、「リアルはADRもDORも高いため、リアルの割り当てを増やす」は失敗に終わる可能性が高く、「平日も強いが、土曜日も高いADRとDORが期待できるOTAの割り当てを増やす」が正しい戦略であることが分かります。

稼働率が高い状態では特に、販路の割り当てが売上アップに大きな影響をもたらします。曜日毎の分析は忘れない様に行いましょう。

キャッシュポイントを増やす

宿泊特化型では宿泊が、シティホテルではそれに加え食事・宴会やウェディングが売上のメインとなります。

もちろん、メインとなる部門の売上最大化が最重要ですが、売上を増やせるポイント = キャッシュポイントは工夫によって増やせます。

フロントをプチ売店として売上アップ

とあるビジネスホテルでは、フロントの横に小さい透明なガラスの冷蔵庫を置いており、お酒や飲み物を販売しています。

ガラス越しに飲み物が見えるため購入意欲をそそりやすく、仕事終わりにホテルにチェックインしたビジネスマンのゲストが部屋で飲むためによく購入するそうです。

館内に飲み物が買える自販機を置いているホテルは多いですが、フロントで売っているとチェックイン時に全員が飲み物を目にすることになるため、購入頻度は格段に上がりそうですね。

また、ご当地のお土産をフロント近くに並べ、販売しているケースもあります。

福岡のあるビジネスホテルでは、福岡土産として有名な「ふくや」の明太子の引換券をお土産として販売し、売上は上々だった様です。

忙しくてお土産を買う時間の無いゲストが、ホテルをチェックアウトするついでに購入していました。

以上の様に、ホテルのフロントをプチ売店として機能させることで、小さな売上を積み重ねることが可能です。

ランドリーサービス

ランドリーサービスとは、洗濯機や乾燥機をホテルに備え付け、ゲストがそれらを利用してい衣類を洗濯できるサービスです。

連泊客や外国人旅行客が多いホテルでは、有料のランドリーサービスが好評となっているケースもあります。

多くの着替えを持っていくのは重たいうえに、部屋の場所も取ります。

洗濯から乾燥までできるランドリーサービスがあれば、数百円程度は喜んで出すゲストも多いでしょう。

ランドリーサービスを無料で提供しているホテルもありますが、宿泊者からすれば、荷物を減らせる、汚れた服を綺麗にして再度着ることができる、等のメリットがあるランドリーサービスは有料でも利用したいものです。

ホテルが洗濯~アイロンまで行ってくれるクリーニング、ゲストがセルフで行うランドリーサービス、等と料金に差をつけて提供するのもありだと思います。

高付加価値で単価を上げた料金プランを作成する

部屋の単価アップに限界がある場合、付加価値を加えることで単価を上げることができます。

付加価値、と言うと難しそうですが、つまりは「あったら嬉しいな」と思えるサービスを考え、宿泊代金に含めれば良いのです。

痒い所に手が届く便利なサービス、非日常感が味わえるサービスを考えます。

例えば、福岡のザ・ワンファイブヴィラ福岡では、アフタヌーンティーが楽しめるプランを販売しており、人気を集めています。

インスタグラムでもおしゃれなアフタヌーンティーの写真を多数掲載しており、オープンから1年半程度で1,700人のフォロワーを獲得しています。

アフタヌーンティーは、原価は安価なものの女性からのウケが良いため、女性が行ってみたいホテルに男性とペアで来館する、という形で売上・利益アップに貢献しています。

上記のアフタヌーンティーの他、ホテルで実際に使われている付加価値付きプランの例を以下に挙げます。

1.ウェルカムドリンクをシャンパンに変更する

2.冷蔵庫にドリンクを置いておき、飲み放題とする

3.他社と提携し海や山でのアクティビティを宿泊とセットにする

4.地域の名物を販売している料理店と提携し、1日2食・3食で販売する

5.シャンプーやパジャマ、他アメニティをブランド力のある物にする

6.VOD見放題にする

7.部屋で食べられる豪華なお弁当付きプランにする

8.近隣のショッピング施設の買物券をセットにする

コロナ禍の影響もあり、旅行先のホテルでの体験に重きを置く旅行者も増えています。自分のホテルのサービスに付加価値をつけられないかを考えてみましょう。

今回の記事では、ホテルの売上アップについて紹介しました。

集客方法についても詳しく知りたい方は、「ホテル・旅館の集客方法を紹介~コロナ禍でも使えるプランアイディアや工夫も具体的にお伝えします」も併せご覧ください。

ホテルの経費削減については「ホテルの経費削減方法を、具体的なアイディアを交えて解説します」で紹介しています。

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