日本のホテル・旅館業界では、少子高齢化と観光需要の回復により、深刻な人手不足が続いています。
人手不足を解決する鍵として注目されているのが、2023年に追加された特定技能「宿泊」の在留資格を持つ外国人材です。
宿泊施設が特定技能外国人を採用することは、宿泊施設の継続的な人材確保や、増え続けるインバウンドへの対応といった様々メリットがあります。
本記事では、特定技能の外国人材採用において、中小規模のホテルや旅館の採用担当者様が抱える疑問や不安を解消するための情報を提供します。
目次
特定技能「宿泊」の概要と種類
特定技能「宿泊」とは
特定技能制度は、日本の産業分野における人手不足を解消するために創設された在留資格です。
その中でも「宿泊」分野は、2023年に追加され、ホテルや旅館業界の労働力不足を直接的に補うことを目的としています。
ホテルや旅館などの宿泊施設で働く外国人が取得できる資格で、一定の技能と日本語能力を持つ外国人材が即戦力として活躍できるようになります。
「宿泊」の資格を取る外国人に必要な条件は、宿泊分野特定技能評価試験に合格すること、日本語能力試験(JLPT)N4レベル以上の日本語能力を有すること、または「国際交流基金日本語基礎テスト」に合格すること等があります。
日本人相手に接客をする場合は、N4レベルの日本語能力ではややコミュニケーションが難しい場面が出てくるので、採用時はN3以上の日本語能力を有しているかをひとつの目安にしましょう。
特定技能の種類と利用条件
特定技能には、特定の技能分野に特化した「特定技能1号」と、より熟練した技能を持つ外国人向けの「特定技能2号」があります。
「特定技能1号」は、最長5年間の在留が可能で、試験に合格し、日本語能力試験(N4相当以上)に合格していることが条件です。
在留期間は通算で上限5年、家族の帯同は原則不可とされており、宿泊施設で働く外国人の多くが有しており在留期間の通算上限や家族帯同に縛りの無い「技術・人文知識・国際業務」の在留資格と比較すると、生活に制限があります。
「特定技能2号」は、より実務経験を積んだリーダー的な役割を想定しており、複数の従業員を指導しながら、宿泊サービスを提供することとされています。
また、特定技能2号の場合の在留期間の更新回数に上限がなく、1年または6ヶ月ごとの更新が可能なうえ、家族帯同も可能です。
更新を続ける限り、事実上無期限に家族と共に日本に滞在できます。
日本ではじめて仕事をする特定技能外国人の大半は、特定技能1号として日本で働くこととなりますが、実務経験を積むことで特定技能2号への在留資格変更も可能です。
ホテル業界における特定技能外国人を雇用するメリット
継続的なマンパワーの確保
特定技能「宿泊」の外国人材は、一定期間の雇用が前提となるため、短期的なアルバイトや派遣とは異なり、長期的に働くスタッフとして施設の安定運営に貢献します。
在留期間の上限が5年間である、特定技能1号の外国人材も、実務経験を積み特定技能2号への移行が可能になれば、事実上の永続的な雇用も視野に入り、長期的な人材育成計画にも組み込むことができます。
また、世界における日本の経済力のプレゼンスは昔に比べると下がったとはいえ、アジア諸国を中心に海外では日本で働きたい人々がまだまだおり、外国人労働者はこれからも増える見込みです。
日本人の労働力人口の減少が確定している今後においても、特定技能外国人を活用することで、施設運営に不可欠なマンパワーを継続的に確保できます。
インバウンド対応力アップ
特定技能外国人の採用は、インバウンド対応力の向上にもつながります。
彼らは自身の母国語や日本語、人によっては英語を話すことができるため、様々な言語でゲスト対応が可能です。
特定技能外国人を数多く日本に送り出しているネパールでは学校教育を英語で行っていることもあり、同国出身者は英語とネパール語を話せる等、2か国語以上を話せる外国人は多いです。
また、韓国や中国等の英語教育レベルの高い国の出身者も、英語が日本人以上に話せる人が数多くいます。
海外ゲストが多い観光地や都市部では、海外出身者の多言語対応力がゲストの満足度アップにつながります。
また、特定技能外国人が母国の習慣や文化について日本人スタッフに共有することで、日本人スタッフの海外ゲストに対する理解が深まることもあります。
技人国の在留資格者を雇用できない場合の対策として
さらに、最近増えているのが技術・人文知識・国際業務(技人国)の在留資格者を追加雇用できない場合に、特定技能外国人を採用するケースです。
技人国の在留資格は、ひとつの施設で雇用している技人国資格者が多い場合、追加の採用が認められない場合があります。
技人国の在留資格は、専門知識や能力を使ったいわゆるホワイトカラー的な業務を行うことが原則となる資格です。
そのような業務を行う外国人がひとつの施設に数多くいるのは行政から不自然とみなされ、ひとつの施設で技人国の外国人を数多く雇用することが認められないケースもあります。
技人国の外国人を既に複数名雇用しており、追加の雇用が難しい場合も、特定技能の外国人は雇用できるため、施設の人員確保に役立ちます。
ホテル・旅館で対応可能な業務
フロントや接客、マーケティング
特定技能「宿泊」の外国人は、宿泊施設における主要な業務であるフロント業務や接客サービスを主として行うことができます。チェックイン・チェックアウト手続き、電話対応、お客様からの問い合わせ対応、観光案内など、多岐にわたる顧客対応が可能です。
最近ではSNSなどを用いた海外向けの情報発信や、海外OTAを活用した予約業務等においても、彼らの語学力やバックグラウンドを活かすことで、集客アップに貢献しています。
清掃やベッドメイキングなどの単純労働も付随的に可能
特定技能「宿泊」の外国人は、主たる業務であるフロントや接客業務に加え、付随的に客室清掃(ベッドメイキング、バスルーム清掃など)や、レストラン・宴会場での配膳、厨房補助、施設の簡単な清掃といった単純労働も行うことが可能です。
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格では、これら単純労働とされる業務は原則として行えないことになっています。
スタッフのマルチタスク化が進んでおり、フロント、接客や予約業務に加え、ときには客室清掃や厨房補助を各スタッフが実施する必要がある施設では、特定技能外国人が活躍できます。
特定技能採用に関する法律と手続き
特定技能外国人の採用は、国内人材の採用とは異なる法的な手続きや注意点が存在します。
これらの情報を事前に把握し、適切に対応することがスムーズな外国人材の受け入れには不可欠です。
採用時の法律と注意点
特定技能外国人を採用する際には、日本の労働基準法や入管法など、関連する複数の法律を遵守する必要があります。
また、特定技能外国人の職位や業務が日本人スタッフと同等の場合は、特定技能外国人の待遇は日本人スタッフと同等にする必要があります。
特定技能の外国人の待遇や給与を不当に低く設定することは禁じられているので注意しましょう。
また、特定技能外国人の生活オリエンテーションや相談支援の実施、住居の確保の支援など、雇用側には「特定技能外国人に対する支援計画」の策定と実施が義務付けられています。
これらの支援は、外国人が日本での生活に円滑に適応し、安心して働ける環境を整えるために非常に重要であり、適切な支援計画の実施は外国人材の定着率向上にも繋がります。
支援計画と実行については、登録支援機関という専門機関に委託することもできます。
特定技能外国人の採用フロー
特定技能制度を利用して外国人材を採用する際のフローは以下のとおりです。
まず、雇用契約を締結したうえで、特定技能外国人支援計画を策定、地方出入国在留管理局への在留資格認定証明書交付申請または在留資格変更許可申請、外国人材の受入れ、支援計画に基づく支援の実施という流れです。
また、特定技能外国人の入社後は定期的に、出入国在留管理庁へ「特定技能外国人受入れに関する届出」を行います。
必要書類は多岐にわたり、外国人本人に関する書類(パスポート、履歴書、技能・日本語試験合格証明書など)と、受入れ企業に関する書類(登記事項証明書、決算書、雇用契約書、支援計画書など)が含まれます。
これらの手続きは複雑であり、専門知識が求められるため、自社で全てを行うのは困難な場合が多いでしょう。
行政書士や宿サポートのような、専門機関の支援を活用することで、手続きの負担を軽減し、スムーズな採用を実現できます。
特定技能外国人材を採用することは、日本のホテル・旅館業界が直面する人手不足の解消に大いに役立ちます。
彼らは即戦力となるだけでなく、多言語対応や異文化理解促進を通じて宿泊施設のインバウンド対応力を高め、サービス品質の向上にも貢献します。
宿サポートは、特定技能外国人材の採用プロセスにおける複雑な手続きの支援から、最適な人材紹介、そして受け入れ後の定着サポートまで、一貫して宿泊施設を支援いたします。
最適な人材確保を通じて、宿泊施設の持続的な発展を共に目指しましょう。
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