ホテルや旅館にとって最大の運営課題となるのが集客です。
集客がままならず稼働率が低い状態では、ADRを上げることも難しく、売上目標の達成は望めません。
こちらの記事をご覧いただいている皆様の中にも、日々の集客に頭を悩ませている方がいらっしゃるのではないでしょうか。
今回の記事では、ホテルや旅館の集客方法を、目標設定からOTAや公式HPの設定まで順を追って紹介します。
具体的なプラン・サービスのアイディアや、曜日別販売経路分析の方法等も記載しているので、皆様にとって役に立つ内容が1つでもあれば幸いです。
目次
目標設定とモニタリング
最初のステップは、集客目標の設定です。多くの場合、集客目標は目標稼働率として設定されます。
まず、ホテル全体の年間の売上目標から逆算し、繁忙期と閑散期の需要の違いを加味したうえで、各月の目標稼働率を設定します。
各月の目標稼働率を設定したうえで、日々の進捗をブッキングカーブを使ってモニタリングしていきます(ブッキングカーブをご存じない方は、ホテルの売上アップをもたらす3つの方法~曜日別経路分析と付加サービスをご覧ください)。
コンセプトの設定
目標をしっかり定めた次のステップは、コンセプトの設定です。
コンセプトの設定、と言うと小難しい感じもしてしまいますが、要するに「ゲストにどんなメリットを提供するホテルなのか」を言葉にすることです。
日本中の町にホテルが建っている現在では、特徴のあるメリットが提供できないホテルは、ゲストに選んでいただくことができません。
ゲストに提供するメリットを言葉にしたうえで、プランやサービス内容に落とし込むことが重要です。
例えば、「ドーミーイン」を提供する共立メンテナンスグループのホテルは、5つの異なるコンセプトを持つホテルブランドがあり、それぞれが異なるメリットをゲストに提供しています。
それぞれのブランドには異なるコンセプトがあり、ゲストに提供するメリットも異なっています。
主にビジネスマンをターゲットとした最もベーシックなブランドである「ドーミーイン」のコンセプトは、「寮事業のノウハウから続く我が家のような寛ぎと快適性を提供するベーシックブランド」です。
ゆったり足を伸ばせる天然温泉の大浴場、風呂上りのアイスや夜間のミニラーメン(夜泣きそば)の提供、自販機の隣に備え付けの製氷機・・・等々、かゆい所に手が届くサービスで、まさに「我が家のような寛ぎ」が提供されています。
上位ブランドの「ドーミーインプレミアム」は、「観光ニーズの多様化にも対応できるようツインや和洋室なども充実したドーミーインのハイエンドブランド」がコンセプトであり、広めのツインや和洋室が充実しています。
この様にコンセプトを設定することで、具体的に用意すべきプランやサービスの内容を決定することが可能なのです。
自社ホテルのゲストのプロフィールや、近隣ホテルの特徴等を踏まえたうえで、ホテルのコンセプト=「誰にどんなメリットを提供するホテルなのか」を言葉にしましょう。
プランとサービス内容のブラッシュアップ
目標とコンセプトの設定の次は、販売するプランとサービスのブラッシュアップを行います。
闇雲にサービスやプランを増やしてはキリが無いため、ホテルのコンセプトに合ったものを考えましょう。
以下では、ホテルで実際に活用されているプランやサービスの内容をご紹介します。
プラン
レイトチェックアウトプラン
チェックアウト最終時刻を、通常のプランよりも後ろ倒しに設定するプランです。
例えば、通常のチェックアウト最終時刻を午前10時までとしているのであれば、レイトチェックアウトプランにおいては、正午12時までとします。
午前中はゆっくり過ごしたい、飛行機や新幹線の出発時間まではホテルで過ごしたい、といったゲストのニーズに応える事ができます。
インバウンドが盛んだった頃は、旅行最終日の飛行機が飛ぶ前に買い物をしたい中国人ゲストが、レイトチェックアウトプランを多く利用する傾向にありました。
稼働率が低く、ワンフロア全ての部屋を、遅いチェックアウト時間にする事で、清掃時間を通常より後にできるホテルで使いやすいプランです。
アフタヌーンティー付きプラン
アフタヌーンティーという付加価値を訴求する事で、素泊まりよりも高い金額で販売するプランです。
来訪されたゲストに、ホテルでの優雅なひと時をアフタヌーンティーと一緒に過ごしていただきます。
レストラン一体型のホテルや、食事に強みがあるホテルに向いています。
単純にアフタヌーンティーが楽しめる、というだけではなく「老舗○○ホテルの料理長監修」や「有名パティシェ監修」など、特別感のあるアフタヌーンティーとして訴求することが人気に繋がります。
例を挙げると、福岡のザ・ワンファイブヴィラ福岡は公式HPやインスタグラム等でアフタヌーンティーを強く訴求しており、実際に食べたゲストがその写真をツイッターにアップして話題になっています。
アフタヌーンティーを目当てに女性ゲストが訪れるため、女性同士のパーティーや、カップル利用の需要を取り込んでいます。
デイユースプラン
デイユース、つまり日帰りのプランを導入します。
ここで重要なのは、単にデイユースを導入するだけではなく、どんなターゲットに向け、何を提供するのか、というホテルのコンセプトを踏まえたうえで、それが伝わる訴求を公式HPやOTAで行うことです。
例えば、ビジネスマン向けにテレワークのスペースとしてデイユースを訴求するとします。
ビジネスマンであれば、安定したWifi環境や広めのデスクは必須となりますので、各種サイトでそれらを確実に伝えましょう。
可能であれば、仕事終わりに一杯飲みたい人もいるでしょうから、ビール一杯無料サービスを付けても良いかもしれません。
大浴場のある施設であれば、仕事中のリフレッシュとして、広々としたお風呂を訴求するのも効果があります。
カップル向けにデイユースを提供するのであれば、女性が喜ぶおしゃれなシャンプー等のアメニティを揃えるのも良いかもしれません。
ラブホテルより宿泊料金が安いビジネスホテルも増えている今のマーケットでは、従来はラブホテルに行っていたカップルの需要を取り込むチャンスです。
長期連泊プラン
2〜3連泊の割安プランは、多くのホテルで用意されているかと思いますが、4連泊以上のプランを用意することで、テレワーク利用者や、コロナの自主隔離が必要な方々等の予約に繋げられます。
テレワークのための連泊では、20連泊を一気に予約するゲストもいます。
また、日本に入国する技能実習生が、自主隔離等で団体で予約する際は、複数人数が2週間程度連泊するため、まとまった部屋数の販売が期待できます。
テレワーク、自主隔離共に、需要の絶対数は大きくありませんが、長期連泊の予約が入れば稼働率の底上げが期待できます。トライしてみましょう。
クオカード付きプラン
昔から出張ビジネスマンに人気のあるプランで、宿泊時にクオカードをゲストに渡します。
例えば、7,000円でプランを販売し、ゲストには1,000円のクオカードを渡すとします。
ホテルの利益は7,000円-1,000円=6,000円となります。
一方、ゲストは7,000円の宿泊代金で領収書を受け取り、1,000円のクオカードを受け取ります。
ゲストは、会社には7,000円の領収書を提出することで7,000円を回収し、1,000円のクオカードを自分のポケットにしまう事ができます。
ホテルからすれば、6,000円の部屋を売ったことと変わりませんが、ゲストからすれば1,000円儲かるわけです。
アメニティ無しプラン
かなり大胆ですが、思い切ってアメニティを無くしてしまい(もしくは有料)、その分客室料金を下げる、というアイディアも効果があります。
さすがにシティホテルでは、アメニティを無くすわけにはいきませんが、価格志向のゲストが多いビジネスホテルでは、検討可能でしょう。
アメニティを無くす、といってもバスタオル等は残しておき、カミソリ、ハンドタオル、くし等の全てのゲストが使うとは限らない物を無くします。
特にアゴダ等の海外サイトやメタサーチ経由で予約するゲストは、価格志向の傾向が強いため、アメニティ無し×低料金 は良い集客ドライバーになるでしょう。
サービス
フリーキャンセル
突然の緊急事態宣言やイベントの延期等、昨今は旅行を中止せざるを得ない出来事が突如発生します。
そして、突然旅行を諦めなければならなくなる事態に備え、ギリギリまでキャンセルできるホテルを選ぶゲストが増えています。
そこで導入をお勧めするのが、いつでもキャンセル自由=フリーキャンセルを導入することです。
キャンセルがいつでも自由にできることで、ゲストの予約に対する心理的ハードルをグッと下がり、同価格帯・同レベルのホテルの中で選ばれる可能性が上がります。
フリーキャンセルにすると、キャンセルが大幅に増えるのでは・・・と思われるかもしれませんが、直近の大幅値引き等をしていない限り、実は通常時とキャンセル率は大幅に変りません。
とあるOTAでは、フリーキャンセルを導入している施設としていない施設で、2020年8月〜2020年12月のキャンセル率を比較したところ、キャンセル率の差は1%以下だったそうです。
尚、この方法は朝・夕2食付きが前提となる温泉旅館等では当然難しいでしょう。
ただ、ビジネスホテルであればトライしてみる価値はあります。
OTA&公式ホームページ設定
OTA
OTAの設定も、集客のために再度見直しましょう。
サイトによって仕様が異なるためチェックが大変かもしれませんが、在庫・料金登録等の基本設定に意外な抜け漏れがあったりします。
在庫は販売可能な限り登録されているか?
基本的な事ではありますが、在庫の登録漏れにより、販売できるはずの在庫がOTAに登録されていない事があります。
特に国内・海外含め数多くのOTAを使っていると、各OTAやチャンネルマネージャーの設定を見落としてしまい、販売の機会損失となっているケースが多いです。
本来は1年先まで販売できる在庫を、6ヶ月先までしか登録していない等の、在庫を延長していないケースや、新規プランを作成した際に一部のOTAでのみ販売し、他のOTAでは販売設定を忘れていた等のケースが多いです。
戦略的に意図して販路を絞ることは問題ありませんが、機会損失が無いよう、売れる在庫は漏れなく登録・販売しましょう。
プロモーションや割引設定が古いままになっていないか?
OTAのプロモーションや各種割引設定を更新しておらず、販売価格がマーケットを大きく下回ってしまう or 上回ってしまうケースです。
しっかり価格をコントロールし、レベニューマネジメントをしているつもりであっても、意図しない価格で販売されていては、レベニューを最大化できません。
特に、Booking.com, Expedia, Agoda等の海外OTAは、割引設定が管理画面から分かりづらくなっているケースもあるので、担当者に定期的に確認しましょう。
公式ホームページ
公式ホームページについて、細かいチェックポイントは大量にありますが、以下では大事なポイントを3点紹介します。
スマホに最適化されているか?
現在のネット予約の大半はスマホです。
スマホに最適化されたサイトでなければ、ユーザーに閲覧・予約いただけることは殆どありません。
大手のチェーンホテルでは問題が無いケースが殆どですが、個人・家族経営されている老舗旅館等においては、まだまだスマホ最適化されていない公式ホームページが存在しているケースも多いです。
公式ホームページを見に来て下さった、予約確度の高いゲストの取りこぼしが無いよう、ホームページ作成業者に相談のうえ、スマホ最適化を着実に行いましょう。
グーグル公式の下記のURLでも、スマホ最適化ができているか否かは簡単にチェック可能です。
ページは重くないか(ページが素早く読み込まれるか)?
ホームページは素早く読み込めるよう、重くならないよう注意しましょう。
ホームページが重いと、ゲストがスムーズに予約できずに離脱してしまったり、検索順位が下がってしまう可能性があります。
ホームページ内の動画等のリッチなコンテンツは、ホテルや旅館の良さを伝える有効なツールではありますが、ホームページが重くなるリスク要因でもあります。
ホテルや旅館の良さは、なるべく軽いコンテンツで伝えられるよう工夫し、無駄なコンテンツを置かないよう注意しましょう。
ホームページの重さの測り方や、対処方法は下記URLに詳しく記載があります。
Webサイトが重い原因と表示速度改善法!これでサイトは軽くなる
予約ボタンは一目で分かる場所にあるか?常に表示されるか?
公式ホームページの存在意義は直接予約を獲得することであり、予約ボタンはゲストに最も押していただきたい部分です。
予約ボタンは、ホームページの一目で分かる場所に配置し、画面をスクロールしても常に表示される様にしておきましょう。
ホテル自体が魅力的に感じられたとしても、すぐに予約できる仕様になっていなければ、ゲストは予約方法が分からず離脱してしまいます。
以上に留意しながら、コツコツと改善を積み重ね予約数を伸ばしましょう。
ホテルの業績アップに関心のある方は、以下の記事も併せご覧ください。
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