ホテル・旅館のインバウンド集客のポイントを解説します

世界各国でワクチン接種が広がり始め、コロナ終息の兆しがようやく見えてきました。
インバウンドの回復はまだまだ先のことではありますが、コロナ対策が世界に普及すれば、海外ゲストは日本に戻ってくることでしょう。

今回は、インバウンド集客のポイントを具体例をあげながら解説します。

どこの国のゲストをターゲットにするか?

インバウンド集客の第一歩は、どの国のゲストをターゲットにするか決めることです。
もちろん、1つの国のゲストだけにホテルを利用してほしいわけではありませんが、集客方法はゲストの住んでいる国によって異なります。
まずは最も多い集客が見込める国に、ターゲットを絞りましょう。

ホテルの場所によって、ターゲットとすべき国は異なります。
以下の円グラフは、2019年の大阪における、外国人延べ宿泊数の国別割合ですが、中国人が約4割を占めています。

graph
日本政府観光局(JNTO)データより作成

大阪においては、集客ボリュームが見込める中国人をターゲットにすべきことが分かります。
以下は福岡における同じデータですが、福岡の場合は地理的に近い韓国人の割合が高いです。
いかに韓国人を惹きつけられるかが、集客にとって重要となります。

国別割合 福岡
日本政府観光局(JNTO)データより作成

広島は、原爆ドームをはじめとした第二次世界大戦に関係する観光地が多いため、アメリカ合衆国やその他欧米諸国の割合が高いです。

円グラフ
日本政府観光局(JNTO)データより作成

日本政府観光局(JNTO) のサイトには、外国人延べ宿泊者数の都道府県別データがあります。
自分たちのホテルのターゲット設定に是非とも活用してみてください。

ターゲットとする国を決めたら、次はターゲットとした国のゲストに、
どの様なサービスを提供し、どの様に宣伝するかを考えます。

以下では、必要なサービスと宣伝方法をゲストの国別 (中国、韓国、台湾、香港に説明します。

中国

買物好き

中国のゲストの最大の特徴は、旅行で使うお金のうち、買い物に使うお金の割合が非常に高いことです。
以下は2019年の日本において、中国人観光客が使ったお金の費目別割合です。

中国円グラフ
日本政府観光局(JNTO)データより作成

これを見ると、旅行に使ったお金のうち約50%は買物代であり、1人当たり10万円以上かけていることが分かります。

今後は買い物ばかりでなく様々なアクティビティや文化体験に使われるお金も増えると考えられますが、現在のところ中国人の旅行において買物は非常に重要であることが分かります。

さて、買物が大好きな中国人に、ホテルとしてどの様なサービスが提供できるでしょうか?

まず1つ考えられるのが、ホテルのフロント近くに活用できるスペースがある場合は、地元の名物や定番のお土産を販売することです。

旅行最終日のチェックアウト日に、帰りの飛行機の搭乗までの時間が限られている場合等、短時間でお土産を買いたいニーズに応えられます。

また、レイトチェックアウトのサービスも、買物好きな中国人には喜ばれます。買物とレイトチェックアウトになんの関係があるのか、と思われるかもしれませんが、実は大いに関係があります。

中国人は、旅行の最終日にお土産等の買物をするケースが多いです。
ホテルの通常のチェックアウト時刻は午前10時前後が主流ですが、この時刻だとホテルをチェックアウトした後に、デパート等で買物をし、多くの荷物をバラバラに抱えたままで空港に向かう必要があります。

もしもレイトチェックアウトにより12時前後にホテルを出発することができれば、旅行最終日の午前中にホテルの近くで買物をした後、ホテルで荷物のパッケージや中国への配送手続きを行い、身軽な状態で空港に向かうことが可能です。

気付いているホテルは多くありませんが、このレイトチェックアウトサービスは多くの中国人ゲストに評判が良いです。
是非とも実施してみましょう。

食事

食事に関しては、地元の名産をふんだんに取り揃えておくと喜ばれます。
また、日本人より食べる量が多い傾向にあるので、コロナの感染対策を実施したうえでビュッフェ形式にするのが良いでしょう。

また、中国人特有の習慣として、白湯を好んで飲む方が、特に年配者に多くいます(日本の魔法瓶が中国人観光客によく売れるのはこのためです)。
冷たい水だけではなく、お湯がいつでも飲める様に準備をしておきましょう。

朝食は、中国の定番である粥や麺類等も取り入れておくと、日本食と合わせて食べていただけるでしょう。
一般的に中国人は冷たい食べ物は好まないとされてきましたが、最近は変わってきており、キンキンに冷やしたビールや、フレッシュな果物等も喜ばれるようです。

中国人への宣伝方法

中国人への宣伝方法は、もちろんインターネットがメインとなります。
様々な方法がありますが、ここではよりメジャーな方法をお伝えします。

まずは、中国人ゲストへの宣伝や集客方法のメインとなるOTA、Trip.comです。
Trip.comは、親会社トリップドットコム・グループの流通取引総額が2019年時点で8650億元(約13兆3600億円)という、世界で最も規模が大きいOTAのひとつです。

中国人集客には欠かせないOTAなので、必ず登録しましょう。サポートセンターの体制が整っていなかったり、レートパリティがなかなか合わなかったりと、トラブルも頻発しますが、それを補って余りあるOTAです。

OTAの他には、SNSも有効な集客手段となります。
代表的なSNSのひとつが、Wechat (ウィーチャット・微信)です。

Wechatは、中国においてチャットや各種支払い、ホテルや飛行機の予約等、あらゆることができるアプリで、月間アクティブユーザーは12億人にもなります。

Wechatの「モーメンツ」機能では、LINEのタイムライン機能の様に、写真やテキストを使って情報発信ができます。

中国人にアピールしたいホテルの特徴・サービスを、写真やテキストで発信することで、集客に繋げることが可能です。

また、Wechatの他にはWeibo(ウェイボー・微博)というSNSも、集客に役立ちます。
Weiboは、中国版のツイッターとも言われており、テキストや写真をリアルタイムでインターネット上に発信できます。

前述したWechatよりも、情報が拡散しやすいため、より多くの人に情報を届けることができます。

WechatとWeiboは、アカウントも作りやすく、テキストと写真があれば利用できるため、情報発信のハードルは低めです。
是非とも使ってみましょう。

韓国

リピーター化を狙う

韓国人ゲストは、滞在泊数や単価は他の国より少ない傾向にあります。
しかし、日本から地理的に最も近い国であるため、訪日回数が多いリピーターの割合が最も高い国です。

以下は、2019年の訪日客の訪日回数別割合を、訪日客全体と韓国で比較したグラフです。

訪日回数
JNTO (日本政府観光局)データより作成

韓国のゲストは、訪日1回目の割合がわずか21%と、全体(36%)と比べ15%も低く、2回目以上のリピーターの割合が高いです。

さらに、10回目~19回目、20回目以上の割合が合わせて22%と、およそ5人に1人は10回目以上のリピーターであることが分かります。

訪日頻度が高い傾向にある韓国のゲストは、旅行や宿泊1回の客単価は高くないものの、ゲストが生涯に渡って訪日時に使うお金の総額は大きくなることが分かります。
つまり、リピーター化が可能かつ重要なのが韓国のゲストなのです。

インバウンドの予約獲得においては、リピーター化に本腰を入れているホテルはまだまだ多くありません。
韓国人ゲストが多い地域のホテルは、是非ともリピーター化を狙っていきましょう。

韓国人ゲストをリピーター化するためには、

①ホテル滞在中の満足度を高める
②次もこのホテルに泊まってみたい!という楽しみを用意しておく

の2点が重要です。

ひとつめの滞在中の満足度を高める方法は色々とありますが、スタッフが韓国人ゲストとスムーズにコミュニケーションを取れるようにすることが重要です。

韓国語を話せるスタッフがひとりはいるのが望ましく、韓国語が難しい場合はせめて簡単な英語を話せるスタッフを用意しましょう。

若い韓国人は流暢な英語を話す人も多いため、英語でコミュニケーションが取れれば、ゲストにストレスを感じさせずに対応できるでしょう。

ふたつめの、ホテルに泊まる楽しみを用意しておくという観点では、食事やお酒を楽しめる様にしておきましょう。

観光庁の「訪日外国人消費動向調査(2019年)」によると、韓国人の訪日リピーターは飲食や酒に使う費用が訪日1回目より高くなっています。

特に、日本の酒を飲むリピーターの割合は、中国や台湾が30%程度であるのに対し、韓国は58%と、酒好きが際立っています。

ホテルにおいては、近隣の飲食店と提携し飲食店で使えるサービス券を種類多く取り揃える、ホテルで日本の高級・有名な酒を買える様にする等、リピーターが喜ぶサービスを用意できます。

韓国人への宣伝方法

訪日韓国人の利用が多いOTAは、Expedia, Agodaです。
このふたつのOTAに注力するのが良いでしょう。

また、韓国ではNAVERという韓国生まれの検索エンジンが使われており、NAVERブログというブログメディアが大きな影響を持っています。

訪日旅行者も、旅行前にNAVERブログでホテルやレストランの評判や体験談をチェックし、滞在する場所を決めています。

韓国語に詳しいスタッフがいる場合は、NAVERブログでの情報発信にチャレンジしてみましょう。
ホテル自前でのブログ運用が難しい場合は、韓国人マーケティングの会社等に依頼し、韓国のインフルエンサーにブログ執筆を依頼するのも手段のひとつです。

台湾

2か月以上の長いリードタイムと、主要国で最も高い家族連れの割合

台湾人は基本的にリードタイムが長く、2か月以上前には飛行機・ホテルの予約を済ませているケースが多いです。

台湾と同じく日本からの距離が近い韓国は、チェックイン1か月以内の直近予約が多いことに比べると対照的なリードタイムです。

台湾向けの告知や特別なプロモーションを実施するときは、遅くともチェックイン日の3か月以上前からスタートすることが重要です。

旧正月や国慶節等、台湾人の宿泊が増えるタイミングを逃さない様に、前倒しで準備を進めておきましょう。

さらに、台湾人の大きな特徴は、家族・親族を連れた旅行が多いことです。
以下は、2019年の訪日客の同行者の割合を、訪日客全体と台湾で比較したグラフです。

台湾同行者
JNTO (日本政府観光局)データより作成

台湾は同行者における「家族・親族」の割合が45%と、訪日客全体に比べ高い割合となっています。
ファミリー向けのサービスやプランを充実させることが、台湾人の集客に繋がります。

具体的な方法としては、アジョイニングルームやトリプルルーム以上の大きな部屋の割引プランを用意する、ベビーベッドや子供向けアメニティを揃える、子供の添い寝を無料にする、等が考えられます。

DOR・ADRの増加に繋がるファミリー層の宿泊は、ホテルの収益にとってもプラスになるので、是非とも力をいれましょう。

台湾人への宣伝方法

台湾人も韓国と同様、インフルエンサーのブログは旅行の情報収集に重宝されています。
さらに、台湾人の特徴として挙げられるのは、Facebookの利用度の高さです。

台湾人のFacebookアカウントの保有率は90%以上で、他のSNSよりも圧倒的に高い利用率となっています。

台湾のインフルエンサーもFacebookをメインに情報を発信しており、海外旅行の情報収集にFacebookが大きな影響力を持っています。

中国語が使えるスタッフがいるホテルは、Facebookでホテルや地域の魅力を発信してみましょう。

台湾人集客に効果的なOTAは、タイを本社とするグローバルOTA、アゴダです。台湾ではエクスペディアやブッキングドットコムよりも、アゴダのシェアが高く、日本への送客量は3社の中で一番です。

販促費が限られている場合は、アゴダへの費用投下を増やすことで、より効率的な集客が可能です。

香港

宿泊費にお金をかける

香港人の最も大きな特徴は、宿泊費にお金をかけることです。
以下は、2019年の訪日外国人の1人当たり宿泊費を国別に比較したグラフです。

1人あたり消費量
日本政府観光局(JNTO)データより作成

アジアの主要な国を比較すると、香港の1人当たり宿泊費が最も高いことが分かります。
香港人は、ホテルで過ごす時間に価値を見出し、お金をかけているのです。

ホテルの目線から考えると、他の国のゲストに比べ、香港人ゲストは高単価の部屋を予約いただきやすく、ADRが上がる傾向にある、と言えます。
高単価の部屋を積極的にアピールしていきましょう。

具体的の対策のひとつは、海外OTAの国別・部屋別プロモーション機能を利用して、香港に対しては高単価の部屋に絞ってプロモーションをかけることです。

更には、部ルームサービスやレストランで中国語対応を可能とすることで、ホテル内でより多くのお金を使っていただく事が可能です。

ホテルの部屋のみで客単価を上げることに限界はありますが、香港人含めインバウンドのゲストは、日本人よりもホテルのルームサービスやレストランを多く使う傾向にあります。

香港人への宣伝方法

香港人も他のアジアの国と同様に、個人のブログやSNSを利用して旅行情報を集めています。
以下は、2019年の訪日香港人が「出発前に得た旅行情報源で役に立ったもの」のランキングです。

出発前に得た旅行情報源
日本政府観光局(JNTO)データより作成

2位の「SNS」においては、香港は中国本土と異なりグローバルで使われているSNSが利用可能で、FacebookやInstagramの利用者が多いです。

香港人にホテルをアピールする際は、これらのSNSのアカウントを開設するか、香港のインフルエンサーマーケティングに強い代理店に依頼をしましょう。

また、香港人の集客に強いOTAは、AgodaとExpediaです。
Booking.comはAgodaとExpediaに比べ香港人の集客力は若干低いため、香港人の集客にはAgodaかExpediaに集中的に投資をしましょう。

今回は各国の旅行者の傾向を紹介しましたが、各国のOTAの利用状況を知りたい方は、インバウンド集客に有効な海外OTAはどれか?をご覧下さい。

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